元不動産屋による不動産と不動産テックについてのお話

元不動産が考える不動産についての話を書いている。前職の記事もありますが気にしないスタイル

敷金を取り戻すテクニック記事の前に分かっておいて欲しいこと

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一部、むっちゃ拡散しているこの記事。

引っ越し時に必ず覚えておきたい!自分で敷金を返還させる全手法【保存版】

私は不動産屋ですからわざわざ揉めないです。
気持ちよく出て行きたいので基本的に東京ルールに即していれば文句言う気もなく敷金清算して終わりです。

そもそも不動産屋なのに大家さんともめるとか恥ずかし過ぎて業界去りたくなるでしょうしねw
※但し少額訴訟自体は体験しておきたいとは思っています。

そもそもですが、この辺の話、別に具体的な事例を見なくても基本理念が分かっておけばだいたい外れないんです。

国は、こういうことを決めています。
「物が壊れたり汚れたりするのが嫌なら貸すなよ!w」
が基本的な考えです。
そして借りる方にはこういうことを決めています。
「お前がプレステ借りた時に、わざわざぶっ壊すような使い方しないでしょ?それは不動産も同じだからちゃんと元の状態で返せるように大事に使いなよ」
ってこれだけです。

これの中間地点の考えでいつももめるんですね。

人に不動産を貸す場合、確定的にこのようなことが起きます。
・水を出す&止める
・ガスを出す&止める
・電球のスイッチのオンオフ
・家電を置く
・人が歩く
等々
基本的に貸すと最低限このようなことが起きるので、そこは貸主さんは諦めなさいと。

・水を出す&止める→蛇口のパッキンが劣化する
・ガスを出す&止める→給湯器が壊れる
・電球のスイッチのオンオフ→スイッチが壊れる
・家電を置く→冷蔵庫の裏の壁紙が黒くなる
・人が歩く→床がきしむようになる

これは、人を住まわせたら絶対に起きることで避けようがないです。だからこういうことは諦めろよと。

一方で借主さんは最低限ここまではしなさいよってことも当然あります。

・タンスを移動させる時ズルズル引きずらないの!ちゃんと持ちあげなさいよ。
・物とかぶつけないように生活しなさいよ。
・適度に掃除はしなさいよ。
・鍵はなくさないこと。
等々

つまり大事に扱いなさいよ(善管注意義務)ということを明示しているのです。

これを細かく決めているのが
住宅:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について - 国土交通省
更に超絶細かく決めているのが
賃貸住宅紛争防止条例/東京都都市整備局
これらになります。

ガイドラインは法律ではないので、東京以外本来は実行力が無いのですが、いかんせんさっきの国が決めている大前提が民法だったりするので、とにかく曖昧すぎて、

具体的にどれやねん!

ということを方方から言われて渋々決定したというかわいい経緯があります。
東京都はもっと厳しい条例にしているのは、とにかく東京って全国から毎年毎年人は入ってくるし、いろんなところで引っ越ししているのでとにかく揉める件数が尋常ではないんですよ。

処理できるかーい!

言って、もうこれに即してやらんと死んじゃうよぉ。ふぇぇ~。
となったので、国交省より厳しくなっちゃったテヘ。という経緯があります。

書いてて意味が分からなくなってきました。

話戻すとですね。
貸すなら長期的に劣化して逐次修繕が起きるのは諦めろ。それが嫌なら貸すな。
借りるなら自分の大事な物と同等の扱いで使いなさい。雑に扱ったらダメ、ゼッタイ


という大前提があれば、退去時の修繕はまず揉めません。(ボッタクリ業者&大家の場合は別)

そして、上記記事中にも言われていますが「ハウスクリーニング」です。

前提としては私がここまで書いてあることを考えると貸主が負担すべき事項です。原理原則として。
というか、もう国も東京都も裁判所もみーんな「基本的に貸主が負担すべきもの」と規定しています。

だから、訴訟したらほぼハウスクリーニング代については勝てます。
※当たり前ですが、全く掃除してなかった部屋のハウスクリーニングは勝てません。
「借主のルール」
・適度に掃除はしなさいよ。
を行ってないのでそうなったら払いなさいになります。

前提が貸主負担だから、どの賃貸契約も「特約」として「ハウスクリーニング費(金●万円也)は、借主の負担とする」みたいな特約条文が付けられています。

これが良いかどうかがいっつも揉めてるんですよ…
ここで法律の詳しい話は避けますが、法律の二項対立状況なので都度都度裁判で決めなきゃならんわけです。もはや国のリソースの無駄使いだと思うのでさっさと規定しちゃってください。

ただね、この記事の悪どさだけは一応言っておきますけど

「どう考えても、契約時にこの特約記載で揉めたら、契約してもらえないし、そもそもいつまでたっても引っ越しできなくなるわけだから、とりあえず契約時は黙っておいて、退去時に『こんなん無効やで!(ゲス顔)』ってゴネようぜ!」

っていう薄ら笑いが透けて見えるんですよ。
これだけが納得いかない。
契約自由の原則から特約に入っているのはいいのですが、本来であればこれは借主側がしっかりと入れるんじゃない!って言うべきなんですよね…
そんなことしたら他で納得する人が別で契約するので、それが無理なのわかっているのですが…

だから国は早くハウスクリーニングについて決定を下すべきってのが長年提言しているんですが、全然動かないので、全国賃貸不動産管理業協会でもなんでもいいからロビー活動でもして決定して欲しいと思います。

最後に…ハウスクリーニングそのものの是非について

日本というものは新しい物好きです。中古嫌いです。
これはもう国民性の問題ないので仕方ないです。

ロンドンやデュッセルドルフでは、ハウスクリーニングの概念はありません。
掃除はすれど、業者を入れての業務クリーニングはありません。(高級物件はハウスキーパーがいるので超絶綺麗ってのはありますが、それはそういう人を借主が雇ってるだけです)
ま、そもそも靴文化ですから意味が無いですからねw

そして、日本ですが、日本はきれいな物好きです。
ケガレの概念が強すぎるんですよ…

グニャってなったきゅうりが売れないとかとレベルは一緒です。
ちゃんとしてないと物が売れないのちゃんとの次元が高いのです。

だからハウスクリーニングをしないと借りてもらえない現実があります。
文化的にみてハウスクリーニングは今後も必須でしょう。
水垢がついたトイレをそのままとか私もイヤですし。

これを無くすってことはできません。
まぁでもとりあえず、ケガレの概念が強い国民性である以上、ハウスクリーニングは必須だし、それが消費者の強い希望であるならば、消費者も一定の費用負担はあるべきかなぁと思います。

ま、妥協点で言えば、ハウスクリーニング費として請求するのではなく、共益費で取るのがベターチョイスかなとは思います。これなら揉めないでしょうし。

そんなことを考えています。