元不動産屋による不動産と不動産テックについてのお話

元不動産が考える不動産についての話を書いている。前職の記事もありますが気にしないスタイル

不動産仲介営業はネット普及前に成功した人が多いのでなかなか営業が切り替えられない【時代背景編】

私が不動産会社に勤めだしたのは2004年4月からです。

 

いまでこそSUUMO,HOMES,athome,Yahoo!不動産,オウチーノなど不動産ポータルサイトが隆盛ですが、2004年時点では

 

HOMESとathomeと不動産ジャパンぐらいで、SUUMOは前身の「住宅情報(通称JJ)」、「イサイズ」などの不動産情報誌がコンビニの最下段に100円とかで売られているのが情報源でした。

 

ここで閑話休題で皆さんにお伝えしたいのは、JJのように

「昔は不動産情報誌は有料だったんですよ!つまり情報は有料です!」

ということで、今はインターネット化によって無料情報が多く出ておりますが、情報を掲載する方は90年代、00年代と同様に相変わらず有料であるので、その点だけはご理解いただければと思います。

 

さてインターネット化といえば、当時の不動産会社にはパソコンが一人一台あるようなところはなく、そもそもパソコンが一人一台無いわけですから当然メールアドレスも一人一つ持ってなくて、「nihonbashiten@hogehoge.com」みたいな店舗メールアドレスがせいぜいあるぐらいでした。

 

というかほとんどパソコンがない会社のほうが多かったんじゃないかな?

 

ちなみに私が新卒で2004年に入社した某大手不動産会社は複数台PCはあったもののWindows98が主力で稼働しており、ほぼ契約書と重説を作成、印刷が主力でした。

なお、補足すると2004年の時点ではWindowsXPはすでに多く販売されており、せめてWindows2000を使ってほしかったと今でも思っています。

ただ前述の通り主力が契約書と重説を作成、印刷だったので投資効果考えると98のままで良かったんだろうなと今では思います。

 

このようなインターネット環境の中で、プロである不動産業者間で流れる不動産情報流通はどのようだったかというと

 

REINS(Real Estate Information NetWork Systems)*1という不動産会社しか見れない不動産ポータルサイトみたいなものがあるのですが、実は90年代からWebサイト化しており、なにげに先進的に取り組んでいた感はあります。(UI/UXはともかく)

 

しかしながら2004年時点でのREINSの利用は毎朝新着掲載物件情報の帳票がFAXで店舗に届き、この情報を見ながら物件を持っている会社さんに電話して「物件まだありますか?物件の図面をいただけますか?FAX番号は03-****-****です」と話して、図面をFAXでいただく。

 

当時は全国の新人の仕事がこれだったんじゃないかなぁ?

ということでWeb化されたREINSでしたが、FAXと電話というアナログシステムで不動産会社とつながっていました。

というか今もそうなんで別に良し悪しの話ではないです。

 

ではそんなFAXで届く不動産情報がどのようにユーザーの手に渡っていたかというと、前述の通り、不動産ポータルサイトがほぼない状況ですし、おそらく2004年当時インターネットで家探しする人なんてほぼいなかったんじゃないかなと思います。

そう考えると黎明期からスタートアップでやってるHOMES*2はすごいなと思うわけで、彼らが先鞭をつけてくれたおかげで今があると思うと、半蔵門の方に足向けて寝れませんね!*3

 

ということで話は戻ってユーザーの不動産情報取得ですが、これはもうほぼ二択でした

  1. 不動産屋の店舗に行って紙をもらう
  2. 投げ込みチラシを見る

次点で住宅情報を買うだったわけです。

次点は有料、1は不動産屋突撃なので行ったら買うまで返してくれない。2はそもそも興味ないと見ない

ということで、不動産情報を欲しがる人は明らかにニーズの顕在層しかいませんでした。

ですから、当然取得する個人情報は「近日中に家を買う可能性が高い」人のリストなわけで、当時いた某不動産会社でも他店舗の店長にお客様を掠め取られたりしていたので、本当に血で血を洗う抗争でした。*4

 

 

今は不動産情報は不動産ポータルサイトを見ることが一般化しまして、不動産買う予定がまだない私でも毎日HOMESとSUUMOは見ていますし、潜在層が不動産市場にいっぱい出てきました。

 

ということでようやく現代に存在する不動産潜在層まで話が及んだので前文はここまででここからが本題です

 

===本題===

 

90年代から00年代が来店誘導型営業で且つお客様はニーズ顕在層ですから、希望を聞いて適切な情報を提供し、買いたい気持ちをより喚起させればあとはレールに乗ってくれるという時代でした(もちろんその分業者の横取り競争は激しかったので隙を見せないようにしないといけないというまた違う難しさがあったのは否めません)

 

今インターネットで不動産情報を見られている方はほとんど「今買う・借りるか決めてない方」が大半です。

決めてないどころか予算の準備も無い方も多くおります。

当然決めてないんですからお金貯めてません。

 

こういう状況でご来店されるお客様は昔からいたんですが、捨ててました正直。

それは、もう貯金も希望も具体的なお客様が多かった時代ゆえの話ですよね。

 

今は登場人物全員潜在層という状態でして、お客様と一緒に伴走していって買うことの意味とか考えさせていかないと駄目な時代が来ているなと感じています。

 

書籍購入はKindleUnlimitedのサブスクに

CD購入はSpotifyのサブスクに

ブルーレイ購入はNETFLIXのサブスクに

車もKINTOでサブスク(厳密には残価設定型ローンな気もしますが)

ゲームもAppleArcadeでサブスク

 

恋愛すらペアーズなどもサブスクといえばサブスク

 

なんというか所有という概念がだんだんなくなっている時代に、不動産屋はどうやって家を買うことを営業していけばいいんでしょうか。

 

とりあえず今日は時代背景までのお話ということで。

*1:※今もみなさんが不動産会社に行って渡される図面はほぼここから情報取得されています。

*2:当時はネクストという会社名だった

*3:HOMESをやっている現LIFULLは半蔵門に会社があります

*4:個人的な恨みはまだ残っています