元不動産屋による不動産と不動産テックについてのお話

元不動産が考える不動産についての話を書いている。前職の記事もありますが気にしないスタイル

不動産業界に参入する異業種の方々へ、たった一つの伝えたいこと

最近、ウェブ系の会社さんなど異業種業界からの不動産業界参入が相次いでいます。

GREEさん、リブセンスさん、DeNAさん、はもとより多数の会社さんが今スタートアップと称して様々なサービスを構築してはリリースを投げています。
ソニーさんも、まぁ異業種参入ですけど、あそこは不動産仲介会社なのでちょっとわかりません。

最近だと、ビッグデータディープラーニング、を使った相場可視化サービスが花開いていますね。※めんどうなんでリンクしませんが。

皆様「情報の非対称性が~」とか「高い仲介手数料が~」とかおっしゃっています。
そういう事業者の方々へお伝えすべきことがあります。
今日はそんなお話
その前にまずは、不動産とはどういう商品か今一度見なおしてみましょう


不動産はベストエフォートな商品


不動産は、同じものが2つ存在しない商品であり、また購入のタイミングがどの人でもほぼ決まっている商品になります。

それらから不動産とはもともと「ベストエフォートな商品」となります。

お客様はだいたい購入の締め切りを設けています。

不動産購入の3大理由は
「子の出産」
「子の進学」
「子の独立」

です。

※10年前まではここに「結婚」があったのですが、20代、30代の給与レンジが下がりまくったのと、結婚式費用の平均が100万円弱まで上がっている為、結婚時は今や賃貸がほとんどになっています。

どれもスケジュールが決まっている為、そこまでに買う強い動機を持った人ばかりになります。
どんなに高収入の人でも24歳で居住用住宅を買う人は稀です(伴侶がいないのに買うメリットが薄い)

※弊社では過去に25年間探しているお客様の契約をお手伝いさせて頂いたことがありますが、その方曰く
「娘が生まれた時に買おうと思って探していたら、去年娘が結婚して出て行っちゃったんだよ。ハッハッハ!」
って契約の時におっしゃっていましたが、こういう方は例外中の例外です。(現に当時の要望と違う家をご購入頂いてそうですし。)

お子様が生まれるまでセキュリティの高い家に住みたい
お子様の学区決定のために特定の学区に住みたい
お子様が家を出て行くので色々無駄なので引っ越したい


いつか決まっているその時に帳尻を合わせて皆様不動産探しを始めます。

その探すとき、不動産はどうなっているかと言うと、

引っ越したい時期にたまたま空いている
引っ越したい時期にたまたま売りに出されている


そんな不動産以外に選択できません。

どんなにとある物件が欲しくても、所有者が売ってなければ買えません。
皇居の住所が欲しくても売ってないので買えません。

だから、
「最大の希望の中で最も要望に近いものの複数」からの選択となります。

日本の総住宅量から考えたら、どんな人にも最強に最高の不動産は存在するのですが、

それが売られているかは別問題

なんですね。

だから、その時その瞬間に出ている商品の中でベストエフォートな商品を選ぶのが不動産の特性なんですね。しかもこれ買ったら、二度と売らない人がほとんど。

だから、「不動産はベストエフォートな商品」なんですね。

それを踏まえたうえで、どんなことを伝えたいかと言うと

予算1億円のお客様でも35年ローンはビビる


正直、いろんな事業者の方を拝見していますが、パーソナルな借金に関しては意外にセンシティブにお考えの方が多いです。
孫正義さんとか大手メーカーの役員さんなんかの契約はさせて頂いたことはないので、彼らのマインドは分かりませんが、年収2000万円クラスでもなぜかビビリます。

別にそれは悪いことでもなくカッコ悪いことでもなく、日本人のお金の考え方はそういうものなんですよ。

そんな中、現場ではどうやっているかというと、ものすごく泥臭い人情味あふれる説得…
ではあるのですが、正直千尋の谷に突き落とす行為ですよ。

信頼関係を地道に構築した両者が目を合わせて「僕を信じて買いましょう!」っていう
本気でここは21世紀か?
というようなことが行われています。

あとは、某販売会社ではまだ行われている「契約するまで帰しません!」というアレです。
今でこそやってる人は少ないですが、ほんの10年前までは結構メジャーなやり方だったと思います。
※一応言いますけど、弊社ではそれはやってません。やってません。大事なことなので2か(以下略

馬鹿らしいし、アホらしいし、そもそも強要じゃないか!って言う人もいるのは分かっています。
でもなぜか不思議なもので、いくつかそういうやり取りの後の契約をしていると、こういうことを言う人が増えていきます。

「あの時、一生懸命押してもらえなかったら、いまだに買えてなかったと思います。」

周囲の見方はそれぞれあれど、当の本人同士ではそういうことをおっしゃる方もいます。
注:)当たり前ですが、そうじゃないとおっしゃる人はいるかと思いますが、一生を棒に振るような家を不動産屋は提供するメリットが全く無いので、とりあえずその説明は割愛します。


いやまぁ、そういう人間の話はいいんです。
これからどういう話をしたいかと言うとね。

データだけだと、どうやっても決めきらない人は、いつまでも納得しないってことですよ。

そして、更に、データだけでどうしようもない人の方が多勢を占めており、データだけで決定できる人だけ集めても事業継続が難しいんですよ。




とはいえね、おそらく世の中の大半の不動産営業マンは、

pepper01


「プログラミングされたペッパー君より営業が下手」

だと思うんですよ。

鍵の開け閉めのスムーズさ、案内で回る物件の順番を決める合理性、物件紹介の詳しい話、全てにおいてペッパー君の方が秀でていると思います。

だから、不動産営業マンはいらなくなると思います。
間違いなく中間省略される運命にあるので、不動産営業マンはいなくなると思いますが、それでも尚、不動産営業マンが生き残る可能性の方が高いのは、上記の精神性になってくると思うんです。

だってペッパー君に

あああ


って言われて、「そうだね!ペッパー君の言うとおりだ!」って言える人少ないですよ。


だからね、私が不動産に異業種から参入してくる会社に本当にお願いしたいのは。

ビッグデータでヒャッハー!!!とかではなく、ラストワンマイルで踏み出せない人が多くいる日本のマネーリテラシーと不動産リテラシーも考えぬいたうえで、日本の不動産を変えるような気概を持って欲しいんですよ。

不動産の流通を変えるとかまぁかっこ良く言えることってあると思うんですよ。
そのほうが社内ベンチャーも役員説得しやすいし、資金調達もしやすいし、でもね、やっぱり10年ぐらいこの業界見ていますけど、他業種からの参入は撤退が恐ろしく早いんですよ。

34歳のおじさんは泣きたいですよ。

だから、今これからブラッシュアップされるサービスもそうですし、出てくるサービスもそうですけど、とにかくこのラストワンマイルで、事業継続が困難になるので、そこも見越して欲しいなと思います。

僕らは営業をメインにしてがんばっていきますから。一緒に協力してできることもあるとおもうんですよね。
既存不動産業界もそれなりにがんばってますから、応援し合いをしつつ、先を考えていこうと思います。