元不動産屋による不動産と不動産テックについてのお話

元不動産が考える不動産についての話を書いている。前職の記事もありますが気にしないスタイル

消費税増税論議

しつこいようですが、不動産売買における消費税はバカになりません。

不動産業界的にも
増税はいいとしても住宅関係は人の住まいに関わる生活の根幹だし、堪忍してやー」
ということを常々言ってきてましたが、結局一律増税になりそうです。

政府税制調査会が「一律だー!」と決定したみたいですけど、どう考えても
「官僚機構による『部門別個別税率だと処理がめんどくさいよねー』という気持ち」
が透けて見えます…

妥結点として
1.年度末確定申告による消費税還付
2.住宅ローン減税を拡充し所得税還付
が同時に検討されているようですが、増税の本質的な不動産業の問題がわかってないようなので、ここで考えを述べておきます。

まず、どちらの妥結点に関しても、不動産販売時に消費税が掛かるのは確定事項であり、それが不動産価格に反映することは明確です。
建築費全てに課税され、それが結果として建物価格に反映する以上、不動産価格の値上がりは充分起こりえる話です。

そうなるとどうなるか?
不動産市況は全て"相場"により決定されます。では、その相場の発点がどこになるかというと、それは新築建物の価格です。不動産は、経年により価格が下落する投資商品ですから、新築建物以上の値のものは、中古では基本的に生まれないこととなっています。そうすると、中古不動産価格は新築建物価格の上昇に伴い、同様に上昇する恐れがあります。

つまり相場全体が高くなる傾向を示しています。

このデフレ基調の中不動産市況のみがインフレ傾向になった場合、給与もデフレ傾向ですから手が届かない人が出て来るんですね。
いや、その手が出ない層はまだいいんですが、不動産が普通に買える層の買いたい物件クオリティが若干下がりミスマッチが起こります。

これがかなり問題です。
昭和から平成のはじめまでは、物件価格を下げて購入することは普通にあったことですが、今2011年は、もうそういうことはありません。希望の物件が無ければ「買わない」が普通に成立する時代です。

不動産は人生におけるプライオリティの下位にどんどん進んでいるんです。
そうすると、一番不動産業を推進する顧客層たる中階級層の不動産離れが起きて、高所得者層と低所得者層の二者市場での不動産売買が行われ、横浜で言うと3000万円台中盤から4000万円台中盤の戸建てやファミリー向けマンション層のバリューゾーンが全て落ち込んでしまします。

この層の下落が、つまり
1.結婚
2.出産
3.手狭
4.学区
これらの生活向上に伴う不動産購入層という、不動産購入理由のトップにいる人々の不動産流通が落ち込んでしまいます。
ここに不動産増税の大きな問題を抱えているんです。

これが単に消費の冷え込みだけならいいです。
でも、生存権、居住権といった基本的人権にまで絡んでくるような

「不動産は金持ちだけの道楽」

に成り果てたら、終わりです。DEAD ENDです。

その辺の2040年ぐらいまでの緩やかな市況変化まで考えてくれないかなー税制調査会は!