元不動産屋による不動産と不動産テックについてのお話

元不動産が考える不動産についての話を書いている。前職の記事もありますが気にしないスタイル

戸建ての価値を見直しと不動産査定と担保評価

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戸建て住宅「20年で価値ゼロ」の評価を見直し

現在、中古市場の一戸建て不動産価格は、
1994年築の一戸建てのある土地付き建物の価格が仮に3000万円だった場合、

土地:3000万円
建物:0円

で評価され、市場で売りだされています。
これを見直そうという話です。

現在における不動産相場の設定は取引事例比較法という方法によって値付けされています。

要は、
2件隣の一戸建てが3200万円で、あなたの家はちょっと狭いから坪単価で計算しなおして3000万円ね。

という形で決まっています。
価格優位性の観点から、最後の最後で競争力確保のためにちょっと安くしたり、ちょっと高くする為に利用するのは真っ当な判断なのでいいのですが、これじゃあ建物の価値が見られないし、立地優先で相変わらずスクラップ&ビルドだよね。ってのがまずいから建物の価値を見直そうと。

もし、記事の内容が正当に実行された場合でも不動産価格の設定が取引事例比較法で決定されていくとするならば、どちらにしろ2件隣の一戸建てが3200万円(土地建物配分不明)で、本物件は3000万円で固定なので、

土地:2500万円
建物:500万円

というように、相対的に土地の価格は下落していくことになります。

これはこれでまずいので、取引事例比較法は、現実的な値付け手法としてはあまり通用しなくなっていきます。

土地の価格仕入れ値が下がれば、その分デベロッパーが買いやすくなってきますので、結果的に新築住宅が潤沢になり、当初国交省が目論む「中古住宅の流通量を増やす」という目標達成が危うくなります。

そこで、そろそろ住宅用不動産の値付けも原価法と収益還元法ないしはDCF法も組み合わせた新しい不動産価格設定方法を盛り込むべきだと思うんですよね。

私自身は、今の日本は経済情勢に比べて不動産価格は激安だと思っておりまして、それもこれも取引事例比較法によるものなんです。

今、取引事例比較法による価格決定の際に、相場判定の事例としてあくまでもリーマン・ショック後の価格しか取引事例比較法には利用されません。
それは、リーマン・ショック前と後で価格が違いすぎるからです。だから、価格は経済情勢に比べて割安になり、デベロッパーは買いやすくなるんですね。
結果、1/31の国交省の調査発表によると、2013年の新設住宅着工戸数は、前年比11.0%増の約98万戸で、前年比増は4年連続で、もうすぐ年100万戸に届こうとしています。

相場より安いなら、デベロッパーだけじゃなく、いろんな人も割安に買えるんじゃないの?
そう思われる方もいるかもしれませんが、実情は全く違います。

それは、銀行の不動産担保評価の仕組みがクソすぎて、適切に融資してくれないんですよね。住宅ローンしかり、不動産事業用ローンしかり。
ぶっちゃけ銀行は不動産担保評価にもとづいて融資するわけではなく、会社の規模で融資金額を決定します。だって、銀行は不動産担保評価できないんだから。不動産仕入れによる事業融資ができないから、会社のみを見て融資を決める…

そうすると、実情として、不動産を買えるのって資金力のあるデベロッパーしかないわけですよ…

一般民衆はクソみたいな担保評価システムの為に、相変わらず就業している企業でしか融資額決めてもらえないし。そもそも中小企業においては融資すら難しいし…

国交省の建物評価システムが稼働したとしても、不動産市場は取引事例比較法で価格決定し、銀行は不動産担保評価をしないで突き進むわけですから、これじゃあ一向に中古住宅流通量の増加なんて絵に描いた餅なんで、まぁちょっとこれを機に、金融庁も銀行に働きかけて頂きませんか?

ぶっちゃけ銀行が変わると、不動産屋も変わらざるをえないんで、建物調査をしっかりやると思うんですよ…

今の不動産屋に原価法や収益還元法を使う意味無いですからね…


国交省の偉い人は、なんか金融庁に働きかける手を一緒に考えてもらえるとウレシイなと思ったり。