元不動産屋による不動産と不動産テックについてのお話

元不動産が考える不動産についての話を書いている。前職の記事もありますが気にしないスタイル

【ル・サンクル小石川後楽園】違約金というものは、おわびのお金ではない

テレビという限られた時間内に要点を伝えなければいけない箱では簡略化された情報を提供せざるをえない場合はありますが、ちょっと勘違いを起こしかねない内容だったので苦言を呈したいと思います。
※建築確認取り消しや近隣の反対運動などについての解説ではなく、あくまでも契約についての考え方の解説になります。

追跡マンション不安 おわびのお金が課税対象になっています。

この問題は
建築中のマンション(完成間近)が、突然建築確認を取り消され、購入希望者に引き渡せなくなったという話です。

だから、今までの契約を破棄しましょうというのが大枠の話です。

違約金の役割


一般的に、販売もほぼ完了し、あと引き渡しを待つだけ。という状況で建築確認が取り消されるということは、ほぼありませんので、こういったことを念頭に置いた条文や特約などを設定することはありません。
大半の場合は、天災地変など、売主買主どちらも責任がない場合について、物件が引き渡せなかったら…という解約条件までしかつけていないのが実情です。

今回は、想定外(専門家は想定内だけども、ここで言う想定外とは契約書条文上の想定外という意味)の内容で契約を破棄することになったので、ここで、不動産契約については違約金が発生します。

違約金とは約束と違うことになった場合、お金で解決して契約を無かったことにしましょうという契約上の仕組みです。

この場合の契約は、お金の対価に、居住用の住宅を提供することが契約の内容になります。
条文のほとんどは、この契約が履行できない場合にどうするか?ということについて延々書いています。

今回は、経緯はどうあれ、居住用の住宅を購入者に提供することができなくなりました。
ここで、違約金が出てくるわけです。

翻って不動産契約とは


不動産契約とは、これは机上の話ですが、基本は引き渡しを以って金銭の授受が行われるわけで、つまり、不動産契約が不履行だった場合、基本的には「双方損も得もしない」ということを前提としています。

もちろん、売主は利益を上げる機会を損失していますし、買主は既に前住居を解約している可能性があるので、双方損失が発生する可能性が高いです。

しかしながら、売主と買主の関係性はあくまで不動産契約しかありません。ですので、契約に対する違約金でしか解決はできませんし、これはあくまで「お金の対価に、居住用の住宅を提供すること」の問題しか解決できません。

もともと前提が契約に基づいた事案である以上、契約外の問題は、不法行為として訴えるか、別に慰謝料なりなんなりで民事裁判するかぐらいしかありません。

おわびのお金とは慰謝料か賠償金とたぶん言う


上記記事にこのような記述があります。
三平弁護士は「違約金については、『慰謝料』とは別のものになっている。仮に、違約金の一部が、慰謝料という名目であり、かつ内容も、心のダメージを穴埋めするものなら、その部分については非課税となる」と話した。
支払われるお金が「慰謝料」という名目であれば、税金はかからないという。
では、今回のケースでは、なぜ、課税対象となる形がとられたのか。
購入者は「慰謝料については非課税じゃないんですか?」というやり取りを、国税庁とされたのか」と質問した。
売り主は「これは、非課税になりません、という、非常に明確な国税局の回答でございまして」と話した。

私は、不動産契約の現場で慰謝料を設定したことは一度もありません。
おそらく、不動産に限らずどの契約も慰謝料を設定するということはないでしょう。
契約自由の原則に基づいて、慰謝料を設定しない契約を締結したのは売主買主双方の合意によるものです。

書き手の意図が購入者の不遇を訴えるのであれば、そこから一歩踏み込んで、こういう場合に慰謝料や損害賠償を取る手立てをこの三平弁護士に聞くべきじゃないでしょうか?(ちなみに私も分かりません)

この件は購入希望者は悪くないので、さすがにかわいそう


残念ですが、件のマンション問題は買主売主ともに不動産売買契約による関係性しかありませんから何をどうやっても不動産売買契約の解除とそれに伴う違約金の授受以外問題解決はありません。

しかし2月引渡し予定で、2/1に解約通知を出すなんてことになれば、そりゃもう退去決まっていたり、現在の不動産の売却が既に終わっていたり…
現状の生活すらままならない状況になっていることでしょう。

正直、この問題がどういう収束を迎えるか分かりません。
ここから解体されるのでしょうか?…このマンションは…